リーズナブルサーファーモデルとは【ユーザー行動でリンク価値が変わる?】

リーズナブルサーファーモデルとは、ユーザーがクリックする確率に基づいてリンクの価値を判断するGoogleのアルゴリズムです。(2004年にGoogleによって出願された特許(US 8117209B1)※に基づく概念)
※これは2004年6月17日に出願されたUS 7716225B1の継続特許です
つまり、ただリンクを設置するだけでなく、「ユーザーにとって合理的でクリックされやすいか」がSEO評価を大きく左右します。
このリーズナブルサーファーモデルは、特にサイト内の内部リンク設計を考えるうえで関わりの深い考え方です。
本記事では、Googleの特許情報などに基づき、リーズナブルサーファーモデルの根幹にある思想から、具体的な実践方法までを徹底的に解説します。
- リーズナブルサーファーモデルの正確な定義と仕組み
- なぜGoogleがこのモデルを重要視するのか、その歴史的背景
- あなたのサイトのリンクが評価されるための7つの重要ファクター
- 理論を実践に活かすための具体的なサイト設計戦略
リーズナブルサーファーモデルとは?
リーズナブルサーファーモデルとは、「ページ内のすべてのリンクを平等に扱うのではなく、ユーザーがクリックする可能性が高いリンク(『合理的(Reasonable)』なリンク)をより高く評価する仕組み」です。
かつてのGoogleは、「ランダムサーファーモデル」という考え方を持っていました。これは、ウェブを閲覧するユーザー(サーファー)は、ページ上のリンクをランダム(無作為)にクリックすると仮定するものです。
このモデルでは、10本のリンクがあれば、ページの評価(リンクジュース)は単純に10等分されていました。
しかし、実際のユーザーはリンクを無作為にはクリックしません。より目立つ場所にあったり、自分に関係が深い内容だったりするリンクを選んでクリックします。
この「合理的」なユーザー行動をページの評価に反映したのが、リーズナブルサーファーモデルなのです。
このモデルの核心は、リンクの価値が「クリックされる確率」で決まるという点にあります。そして、このクリックされる確率が高い場合、「リンクジュース」が受け渡されやすく、SEO上評価されやすい記事となります。

リンクジュースの概念について詳しくは、リンクジュースとは?SEO効果を高める仕組みをご覧ください。
Googleの歴史から紐解く、リーズナブルサーファーモデル誕生の背景
なぜGoogleは、わざわざこのような複雑なモデルを導入したのでしょうか。その理由を知るためには、少しだけGoogleの歴史を遡る必要があります。
Googleが登場する前の検索エンジンも、単純なキーワード頻度だけでなく、単語の近接性、ページ構造、位置などを考慮した関連性アルゴリズムを使用していました。
- AltaVista(1995年):重み付け関連性機能
- Infoseek(1995年):ページ構造分析
- RankDex(1996年):Googleより2年早くリンク解析ランキングを開発
しかし、これらの手法では依然として操作されやすく、質の低いページが上位を占めてしまう問題が完全には解決されていませんでした。
そこでGoogleの創業者たちは、スタンフォード大学の研究プロジェクトの中で画期的なアイデアを思いつきます。それが「PageRank」です。これは「多くの良質なページからリンクされているページは、同様に良質なページである可能性が高い」という考え方に基づいています。
このPageRankの計算の元になったのが、前述の「ランダムサーファーモデル」でした。
しかし、このランダムサーファーモデルには限界がありました。SEO業者たちが、意味のないリンクを大量に設置することで、作為的にPageRankを操作しようとし始めたのです。
Googleは、こうしたウェブスパムと戦い、よりユーザーにとって価値のある検索結果を提供する必要に迫られました。その結果、2004年に出願された特許(US 8117209B1)※の中で提唱されたのが、リーズナブルサーファーモデルなのです。
※これは2004年6月17日に出願されたUS 7716225B1の継続特許です
これは、単なるリンクの数ではなく、ユーザーの行動に基づいた「リンクの質」を評価することで、より現実に即した公平なランキングを実現しようという、Googleの強い意志の表れでした。



このように、リーズナブルサーファーモデルは、Googleが検索品質を追求する中で生まれた、必然的な進化だったと言えるでしょう。
あなたのリンクは大丈夫?クリックされやすいリンクの7つの重要ファクター
ここからは、あなたのサイトのリンクがリーズナブルサーファーモデルに評価されるために、具体的に何をすべきかを解説します。
内部リンクのクリック率を左右する重要なファクターを7つに分類しました。ぜひ、ご自身のサイトと照らし合わせながら読み進めてみてください。
ファクター1:配置場所
リンクは、ページ内のどこに置かれているかで価値が大きく変わります。一般的に、ユーザーの目に付きやすい場所ほど高く評価されます。
OK例
- 記事の冒頭
- ヘッダーのグローバルナビゲーション
- パンくずリスト
- 関連性の高い文脈の文中
NG例
- フッターの隅
- 大量のリンクが羅列されたサイドバー
ユーザーはF字型にページを読む傾向があるため、特にページの上部や左側に配置されたリンクはクリックされやすいと考えられています。
ファクター2:視覚的デザイン
リンクが視覚的にどれだけ目立つかも重要な要素です。ユーザーが一目で「これはクリックできる」と認識できるデザインが求められます。
OK例
- 周囲のテキストと色が違う(一般的には青色)
- 下線が付いている
- フォントサイズが大きい
- ボタン形式になっている
NG例
- 周囲のテキストと全く同じデザイン
- 背景色に溶け込んで見えない
デザインは、ユーザーに「ここにはさらに有益な情報がある」と期待させる役割を果たします。
ファクター3:アンカーテキスト
アンカーテキストとは、リンクが設定されたテキストのことです。このテキストが、リンク先のページの内容を的確に表しているかが極めて重要です。
OK例
具体的なキーワードが入っており、リンク先の内容がわかりやすいリンク
例:「内部リンクの最適化方法」「トピッククラスターの作り方」
NG例
キーワードが入っておらず、リンク先の内容がわかりにくいリンク
例:「こちら」「詳細はこちら」「クリック」
具体的で分かりやすいアンカーテキストは、ユーザーと検索エンジンの両方に、リンク先にどのような情報があるのかを明確に伝えます。
アンカーテキストの具体的な書き方や最適化手法については、SEOに効果的なアンカーテキストの書き方でさらに詳しく解説しています。
ファクター4:関連性
リンクがどのような文脈で語られているかは、その価値を大きく左右します。
OK例
内部リンクについて解説している文章の中で、アンカーテキストの重要性に触れ、その詳細記事へリンクする。
NG例
料理のレシピ記事の途中で、全く関係のない車の修理に関する記事へリンクする。
リンクは、話の流れを自然に補強し、ユーザーのさらなる知的好奇心を満たす形で設置されるべきです。
ファクター5:リンク数 – 価値の希釈化を避ける方法
1つのページにリンクが多すぎると、1つあたりの価値は薄まってしまう可能性があります。これは、PageRankがページ内のリンク数で分配されるためです。
OK例
ユーザーにとって本当に必要で、関連性の高いリンクに絞って設置する。
NG例
1ページに100個以上の内部リンクを無秩序に設置する。
リンクは量より質です。厳選された価値あるリンクだけが、ユーザーを正しく導き、SEO評価を高めます。適切なリンク数については、内部リンクが多すぎることのSEOへの影響も参考にしてください。
ファクター6:リンクの種類 – テキストか画像か
リンクにはテキストリンクと画像リンクがありますが、一般的にはテキストリンクの方が検索エンジンに内容を伝えやすいとされています。
OK例
重要なリンクは、キーワードを含んだアンカーテキストを持つテキストリンクで設置する。
NG例
重要なリンクを、alt属性(代替テキスト)が設定されていない画像のみで設置する。
画像リンクを使用する場合は、その画像が何を表しているのかをalt属性で必ず説明するようにしましょう。
ファクター7:ユーザー行動
最終的にリンクの価値を決めるのは、ユーザーが実際にそのリンクをクリックするかどうかです。Googleは実際のクリックデータを分析していると考えられています。
OK例
多くのユーザーが実際にクリックし、リンク先のページで満足してさらに回遊するリンク。
NG例
誰からもクリックされず、無視されているリンク。
結局のところ、これまでの6つのファクターはすべて、この「ユーザーにクリックしてもらう」という目的のためにあるのです。
このパートで解説した7つのファクターは、あなたのサイトのリンク価値を診断する上で非常に重要です。
ぜひ、ご自身のサイトの内部リンクがこれらの基準を満たしているか、確認してみてください。
また、「内部リンクの調べ方」で紹介しているようなツールを使って、内部リンクを調査・管理することも重要となります。



LYNXで提供している、サイト全体の内部リンク構造を可視化できるツールを使うと、より効率的に内部リンクの調査を進められます。
【実践編】リーズナブルサーファーモデルを応用した戦略的サイト設計
理論を理解したところで、次はこのモデルを具体的なサイト改善アクションにどう繋げるかを解説します。
トピッククラスターへの応用
リーズナブルサーファーモデルの考え方をサイト全体で体系的に実践するSEO戦略が「トピッククラスターモデル」です。これは、ある中心的なトピック(ピラーページ)と、それに関連する個別テーマ(クラスターページ)を内部リンクで結びつけ、テーマ全体の専門性を示す手法です。
この構造では、各クラスターページから中心となるピラーページへ、そしてピラーページから各クラスターページへと、関連性の高いリンクが合理的に設置されます。
これにより、リーズナブルサーファーモデルに高く評価され、サイト全体の評価向上に繋がるのです。
重要ページにリンクを集める
あなたのサイトで最も重要なページに、効率的にリンクジュースを集めることが重要です。
以下のような箇所にリンクを設置すると効率的に重要ページへのリンクを集められるでしょう。
- グローバルナビゲーション
全ページの上部に表示されるため、サイト内で最も重要なページへのリンクを設置するのに最適です。 - パンくずリスト
ユーザーがサイト内の現在地を把握し、上位階層へ戻るための合理的なリンクであり、これも高く評価されます。
これらの場所に戦略的にリンクを配置することで、サイトの重要ページにリンクジュースを集中させることができます。
外部リンク獲得への応用
リーズナブルサーファーモデルの考え方は、外部サイトからリンクをもらう(被リンク)際にも応用できます。どのような被リンクが本当に価値を持つのか、それは「相手サイトのユーザーが、思わずクリックしたくなるような自然な文脈で紹介されているリンク」です。
単にリンク集ページにURLが載るよりも、質の高い記事の本文中で、あなたのサイトが専門的な情報源として引用・紹介される方が、はるかに価値の高いリンクとなるのです。
よくある質問 (FAQ)
このパートでは、リーズナブルサーファーモデルに関してよく寄せられる質問について、簡潔にお答えします。
Q1 リーズナブルサーファーモデルは、今でも有効な考え方ですか?
リーズナブルサーファーモデルは現在でも有効な考え方です。
2021年の「ページエクスペリエンスアップデート」や2022年の「ヘルプフルコンテンツアップデート」など、近年のGoogleの動向は一貫してユーザー体験を重視しています。
リーズナブルサーファーモデルは、そのユーザー行動を評価する考え方の根幹をなすものであり、その重要性は増していると言えます。
Q2 PageRankはもう見れないのに、なぜ気にする必要があるのですか?
確かに、以前のようにツールバーでPageRankの数値を見ることはできなくなりました。しかし、Googleの内部では今もPageRank(あるいはそれに類する指標)が使われ続けています。
リンクを通じてページの価値が受け渡されるという基本概念は変わっていません。そのため、その価値がどう分配されるかを定めたリーズナブルサーファーモデルを理解することは、依然として非常に重要です。
Q3 nofollowリンクは、このモデルでどう扱われますか?
rel="nofollow"
属性が付いたリンクは、基本的にPageRankを渡さないとされています。
しかし、2019年にGoogleは、nofollowを「命令」ではなく「ヒント」として扱うと発表しました。これは、場合によってはnofollowリンクも評価の参考にすることがある、という意味です。
ただし、基本的には重要な内部リンクにnofollowを使うべきではありません。
まとめ
今回は、Googleの評価アルゴリズムの根幹をなす「リーズナブルサーファーモデル」について、その誕生の背景から具体的な実践方法までを詳しく解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントを振り返りましょう。
- リーズナブルサーファーモデルは「クリック確率」でリンクを評価する
全てのリンクは平等ではなく、ユーザーがクリックしたくなる合理的なリンクほど高く評価されます。 - リンクは「ユーザーにとって合理的か」という視点で設計するべき
配置場所、デザイン、アンカーテキストなど、全ての要素をユーザー視点で見直すことが重要です。 - この思想の理解が、変動に強い普遍的なSEOスキルの土台となる
小手先のテクニックではなく、Googleの思想を理解することで、長期的で安定した成果に繋がります。



この記事をきっかけに、ぜひご自身のサイトのリンク戦略を見直してみてください。その一歩が、あなたのサイトを次のレベルへと引き上げるはずです。